2025/01/15
工場や倉庫の建設・改修において、屋根の選定は建物の性能や維持管理に大きく影響を与える重要な要素です。波型スレート屋根、折板屋根、陸屋根、立ハゼ葺きなど、それぞれの屋根には特徴的なメリット・デメリットがあり、用途や環境に応じて適切な選択が求められます。
本記事では、工場・倉庫で用いられる代表的な屋根の種類とその特徴、メリット・デメリットについて詳しく解説します。また、改修工事の目安となるタイミングについても併せて紹介します。
工場・倉庫で用いられる屋根の種類
工場や倉庫で主に用いられる屋根の種類は以下の4つです。
波型スレート屋根
波型スレート屋根は、セメントと繊維を混ぜて波形に成形した屋根材で、大波スレートと小波スレートの2種類があります。
耐久性、断熱性、遮音性、耐火性に優れた特徴を持ち、比較的安価な点も施工時の選択肢として魅力的となっています。
折板屋根
折板屋根は、ガルバリウム鋼板などの金属板を蛇腹状に折り曲げた形状の屋根で、近年では大規模施設での採用が主流となっています。軽量性が特徴的で、建物本体への負担が少ないという利点があります。
陸屋根(コンクリートスラブ)
陸屋根(コンクリートスラブ)は平らな形状をした屋根で、主にコンクリート造の工場や倉庫での採用が見られます。耐久性、断熱性、遮音性、耐火性に優れた特徴を持ちますが、屋根が重くなるので建物本体の構造を強くする必要があります。
立ハゼ葺き
立ハゼ葺きは、溝板両端の立上がり部を巻きはぜに組み上げた金属屋根で、工場や倉庫などの大規模建築物に適しています。高い防水性と耐久性を持ち、負圧に対する強度も優れています。スタンディングシームぶきなどの発展形も含め、現代の工場建築では広く採用されている工法です。
波型スレート屋根のメリット・デメリット
メリット
メリットの一つとして、高い遮音性が挙げられます。スレート材が持つ独特の性質により、激しい雨が降った際でも室内に雨音が響きにくく、工場内での作業や倉庫での保管作業に支障をきたしにくい環境を実現可能です。
また、比較的安価な材料でありながら十分な耐久性を備えており、初期投資を抑えつつ長期的な使用に耐えられるという点で優れたコストパフォーマンスを発揮します。
デメリット
一方でデメリットとしては、表面に特有のザラザラとした凹凸があるため、埃や排気ガスなどの汚れが付着しやすい傾向があります。さらに、この表面の性質により、一度付着した汚れは落ちにくく、経年による美観の低下が比較的早く進行する可能性があります。
比較的衝撃に弱く外的な要因で屋根材が割れることがあります。
折板屋根のメリット・デメリット
メリット
メリットとしては、まず金属製の折板構造によって優れた強度を実現しています。この構造的特徴により、積雪や強風などの自然環境の影響にも高い耐性を示します。また、工場での事前成型が可能で現場での施工が比較的単純な作業となるため、施工期間の短縮とコスト削減に大きく貢献可能です。
さらに、表面処理技術の進歩により、従来の金属屋根で懸念されていた錆びに対する耐性が大幅に向上しており、長期的な耐候性も確保されています。
デメリット
一方でデメリットとしては、金属素材の特性上、断熱性や遮熱性に課題があるため注意が必要です。夏季には屋根面からの熱が室内に伝わりやすく、冬季には室内の熱が外部に逃げやすい傾向があります。その結果として、建物全体の空調効率が低下し、エネルギー消費量の増加につながる可能性があります。
追加の断熱材施工や空調設備の能力調整などの対策が必要となる場合もあり、これらのコストも考慮に入れる必要があります。
陸屋根(コンクリートスラブ)のメリット・デメリット
メリット
屋根形状によるメリットとしては、平らな形状による室内空間の有効活用が挙げられます。計画次第では天井高を十分に確保でき、開放的な空間を実現しやすいのです。厚いコンクリート構造により断熱性、遮音性、耐火性、耐久性も担保されます。
また、屋上スペースとして活用できるため、設備機器の設置場所や作業スペースとして有効利用が可能です。さらに、傾斜がない構造のため、メンテナンス時の作業性が良く、特に積雪地域では雪の落下リスクも軽減されます。
デメリット
一方でデメリットとしては、平らな形状のため水はけが悪く、雨漏りのリスクが高くなる課題があります。このため、防水工事が必ず必要になり、定期的な防水層のメンテナンスコストも考慮が必要です。
また、コンクリート構造による重量が大きいため、建物本体の構造を強くする必要があり、これに伴う建設コストの増加も考慮が必要となります。基礎工事も大がかりになりやすく、地盤条件によっては追加の補強工事が必要となる場合もあります。
立ハゼ葺きのメリット・デメリット
メリット
メリットとしては、まず高い防水性が挙げられます。立ち上がった部分を巻き込んで接合する工法により、雨水の浸入を効果的に防ぎ、優れた耐候性を実現しています。
また、金属素材の特性と工法の特徴により、大規模な建築物でも安定した施工品質を確保できます。工場での事前成型が可能で、現場での施工効率も良好です。さらに、金属素材の軽量性により建物本体への負担が少なく、構造設計の自由度も高くなります。
屋根材の表面がフラットなため、汚れが付着しにくく、清掃もしやすいという特徴があります。また、現代的な外観デザインとしても評価が高く、工場や倉庫の意匠性向上にも貢献します。
デメリット
一方でデメリットとしては、折板屋根と同様に、金属素材を使用するため断熱性に課題があります。夏季の熱負荷や冬季の結露対策として、適切な断熱材の施工が必要となり、これに伴うコストも考慮しなければいけません。
また、施工時には高い技術力と細かな精度管理が求められます。特に接合部の施工品質は防水性能に直結するため、熟練した職人による施工が必要となり、これが工事費用に反映される場合があります。
工場・倉庫の屋根を改修するタイミングとは?
工場・倉庫の屋根を改修するタイミングは、以下の要因に基づいて判断します。
屋根の種類による目安
・波板スレート:5〜7年ごとに定期点検、約10年で塗り替え、15年で棟の交換、約30年で全体交換
・折板屋根:10〜15年ごとに塗装や定期点検
・立ハゼ葺き:10〜15年ごとに塗装や定期点検、接合部の点検
劣化の兆候
・色褪せ、カビ、チョーキング現象、コケや落ちない汚れが目立つ場合
・変形、腐食、ボルトの錆び、塗装の劣化、自然現象による変形や穴開きが見られる場合
建物の年数
建築後20年以上経過した倉庫・工場では、屋根の劣化や雨漏りなどの問題が頻発するため、改修を検討する必要があります。
予防的メンテナンス
劣化が進む前に定期的なメンテナンスを行うことで、工場や倉庫の寿命を延ばし、低コストかつ短期間で工事を完了できます。
適切なタイミングで屋根改修を行うことで、雨漏りなどの二次被害を防ぎ、建物の資産価値を維持することができます。定期的な点検と早期の対応が重要です。
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